年金 2026.07.30

障害年金の等級を分ける「障害状態要件」と診断書で損をしないためのポイント

加藤 信二

 障害状態要件は、障害の種類ごとに細かく基準が定められていますが、まず等級ごとの大まかなイメージをお伝えし、その後に主な障害の種類別の考え方を説明します。

1.等級ごとの大まかな基準
 1級は、他人の介助を受けなければ日常生活のほとんどができない程度の状態を指します。たとえば、身の回りのことはかろうじてできても、それ以上の活動は困難で、入院や在宅で常時の介護を必要とするような状態がこれにあたります。
 2級は、必ずしも他人の助けを借りる必要はないものの、日常生活が極めて困難で、労働によって収入を得ることができない程度の状態を指します。家庭内の簡単な活動はできても、それ以上の活動はできない、外出が極めて困難といった状態がイメージです。
 3級は、障害厚生年金のみに設けられている等級で、労働が著しい制限を受ける、または労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の状態を指します。日常生活にはあまり支障がなくても、フルタイムで働くことが難しいといった状態が該当し得ます。
 障害手当金は、障害厚生年金の制度にのみあるもので、3級よりも軽度ですが、労働に一定の制限がある状態に対して一時金として支給されます。

2.障害の種類別の考え方
 身体障害(肢体・視覚・聴覚など)については、関節の可動域、視力・視野の数値、聴力レベルなど、ある程度数値化できる基準が診断書のフォーマットに沿って定められています。
 精神障害(うつ病、統合失調症、発達障害、知的障害など)については、数値だけでは測れないため、日常生活能力の判定(身辺の清潔保持、金銭管理、対人関係、社会性など複数の項目)と日常生活能力の程度を組み合わせて、総合的に等級を判断する仕組みになっています。
 内部疾患(糖尿病、心疾患、呼吸器疾患、がん、難病など)については、検査数値(血糖値やHbA1c、心機能の指標など)に加えて、その病気が日常生活や就労にどの程度の制限を及ぼしているかを総合して判断されます。

3.判断のポイント
 ここで大切なのは、等級認定が「病名」だけで決まるのではなく、「その障害によって日常生活や就労がどの程度制限されているか」という実態で判断される点です。同じ病名であっても、症状の重さや生活への影響度によって認定される等級が異なります。
 また、診断書に記載される内容(検査数値、日常生活の状況、就労状況など)が認定結果を大きく左右するため、実際の申請にあたっては、医師に日頃の状態を正確に伝え、診断書に実態が適切に反映されるようにすることが重要だとされています。
 診断書は医師が作成するものですが、申請する方やご家族が「どんな点に気をつけるとよいか」を知っておくことは、実態に即した診断書を作成してもらう上でとても役立ちます。

4.診断書には障害の種類ごとに専用の様式がある
 障害年金の診断書は、すべて同じ書式ではなく、障害の種類(肢体の障害、精神の障害、循環器疾患、呼吸器疾患、腎疾患、眼の障害、聴覚・言語の障害、知的障害・発達障害など)ごとに専用の様式が用意されています。まず、ご自身の障害がどの様式に該当するのかを確認し、正しい様式を医師に渡すことが出発点になります。

5.医師に正確に状態を伝えることが何より重要
 診断書は医師が診察や検査の結果をもとに作成しますが、医師は普段の生活の様子を把握しているわけではありません。そのため、日常生活でどのような場面に困っているか(身の回りのこと、外出、対人関係、仕事や家事の継続のしにくさなど)を、できるだけ具体的に医師に伝えることが大切です。
 たとえば、「だるい」「つらい」といった抽象的な表現だけでなく、「一人で買い物に行けない」「週に何日仕事を休んでいる」「薬を飲み忘れることが多い」など、具体的なエピソードや頻度を伝えると、医師が実態を反映した記載をしやすくなります。

6.日頃から記録をつけておくと役立つ
 診察時にうまく説明できないこともあるため、日々の体調や困りごとをメモや日記のような形で記録しておき、診察の際に医師に見せるという方法もよく勧められています。これにより、診断書作成時に実態がより正確に反映されやすくなります。

7.整合性も大切なポイント
 診断書の内容と、本人が記入する「病歴・就労状況等申立書」(申請者自身が症状の経過や生活状況を記載する書類)との間に大きな食い違いがあると、審査で疑問視されることがあります。両方の書類で伝える内容に矛盾がないよう、事前に自分の状況を整理しておくとよいでしょう。

8.作成を依頼するタイミングと注意点
 診断書には「現症日」(その時点の症状を記載する基準日)が定められており、原則として障害認定日や請求日から一定の期間内のものである必要があります。期限を過ぎると診断書を取り直す必要が生じることもあるため、早めに主治医に依頼し、必要な期間内に発行してもらうよう調整することが大切です。

9.専門家のサポートを受けるという選択肢もある
 診断書の依頼や申立書との整合性の確認など、申請プロセス全体は煩雑になりがちです。もし不安がある場合は、障害年金を専門とする社会保険労務士に相談しながら進める方も多くいらっしゃいま
す。
10.まとめ
 まとめると、診断書そのものは医師が作成するものですが、「日頃の困りごとを具体的に整理して伝える」「記録をつけておく」「申立書との整合性を意識する」という準備をしておくことで、実態に即した診断書を作成してもらいやすくなります。
 「病歴・就労状況等申立書」は、申請者ご本人(またはご家族)が、発病から現在までの経過や日常生活・就労の状況を自分の言葉で説明する書類です。診断書が医師の視点からの記録であるのに対し、こちらは本人の生活実感を伝える重要な役割を持っています。