相続税 2026.06.15

相続税がかかりにくい方法!知ってるだけで節税できる

加藤 信二

相続税は、生前の「贈与」を上手に使えば合法的に軽くできます。カギになるのは、毎年110万円まで非課税の「暦年贈与(れきねんぞうよ)」と、累計2,500万円まで非課税の「相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい)」という2つの制度です。2024年(令和6年)1月の改正で、この2つの「使いどき」が大きく変わりました。

この記事では、自分はどちらを選べばいいのかを、相続税がかかる人・かからない人に分けてやさしく解説します。「知らずに損した」を防ぎ、ムダな税金を減らすための要点だけをまとめました。

相続税は誰にかかる?基礎控除を超えた人だけ

相続税がかかるのは、亡くなった人の財産が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」(基礎控除)を超えた場合だけです。この金額以下なら、相続税はかかりません。

基礎控除の計算式|相続人が多いほど増える

基礎控除は、法定相続人が1人増えるごとに600万円ずつ大きくなります。たとえば配偶者と子ども2人なら相続人は3人で、基礎控除は4,800万円です。

法定相続人の数 基礎控除額(非課税ライン)
1人 3,600万円
2人 4,200万円
3人 4,800万円
4人 5,400万円

出典:国税庁「No.4152 相続税の計算」(2026年6月時点)

まずは「自分は課税対象か」を確認しよう

節税を考える前に、自分や家族の財産が基礎控除を超えそうかを確かめます。超えない見込みなら、選ぶべき対策の方向がガラッと変わります。「超えそう」「超えない」のどちらかで、この先の読み方も変わってきます。

相続税を減らす2つの方法|暦年贈与と精算課税

生前に財産を渡しておく「生前贈与」が、相続税対策の基本です。方法は大きく分けて、「暦年贈与」と「相続時精算課税」の2つがあります。

暦年贈与とは?毎年110万円まで非課税

暦年贈与は、1月1日〜12月31日の1年間にもらった財産のうち110万円までを非課税にできる仕組みです。「暦年(れきねん)」とは1月から12月までの1年間のこと。もらう人ごとに枠があり、110万円以内なら申告も原則いりません。

出典:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」

相続時精算課税とは?2,500万円まで非課税

相続時精算課税は、累計2,500万円までの贈与を非課税にできる制度です。2024年からは、これとは別に毎年110万円の非課税枠も加わりました。使えるのは、60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫へ贈与する場合に限られます。

出典:国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」

暦年贈与

  • 毎年110万円まで非課税(もらう人ごと・人数制限なし)
  • 贈与する人・される人の制限がゆるく、誰でも使いやすい
  • 2024年改正で「亡くなる前7年分」は相続財産に持ち戻し
  • あとから相続時精算課税へ切り替えできる

相続時精算課税

  • 累計2,500万円まで贈与税ゼロ+毎年110万円も非課税(2024年新設)
  • 60歳以上の父母・祖父母 → 18歳以上の子・孫が対象
  • 2,500万円分は相続時に持ち戻し(毎年110万円分は持ち戻し不要)
  • 一度選ぶと暦年課税には戻せない

【2024年改正】暦年贈与の持ち戻しが7年に延長

2024年1月1日以降の暦年贈与は、亡くなる前7年分が相続財産に足し戻されます(持ち戻し)。改正前は3年だったため、亡くなる直前の「駆け込み贈与」は効きにくくなりました。

「持ち戻し」とは?相続財産への足し戻し

持ち戻しとは、生前にした贈与を亡くなったときの相続財産に加えて計算し直すルールです。これにより、非課税で渡したはずの分にも相続税がかかってしまいます。

4〜7年分は総額100万円まで控除できる

新しく加わった「亡くなる前4〜7年」の贈与については、その合計から100万円を差し引ける緩和措置があります。ただし直近3年分には、この100万円控除はありません。

出典:国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」

完全に7年になるのは2031年以降の相続

持ち戻し期間は、いきなり7年になるわけではなく段階的に延びます。2026年12月末までに相続が起きた場合は、これまでどおり3年のままです。

相続が起きた(亡くなった)時期 持ち戻し期間
2026年12月31日まで 3年
2027年1月〜2030年12月 段階的に延長(3年超〜7年未満)
2031年1月以降 7年(完全移行)

ポイント

持ち戻しは「亡くなる前」の贈与が対象です。早く始めて長く続けるほど、持ち戻しの影響を受けずに財産を移せます。暦年贈与は「思い立ったらすぐ」が鉄則です。

精算課税が有利に|毎年110万円が非課税に

2024年から、相続時精算課税には2,500万円の枠とは別に「毎年110万円」の非課税枠が新設されました。しかもこの110万円は、持ち戻しの対象になりません。

何が変わった?毎年110万円が申告不要に

改正前は、贈与した全額が相続財産に持ち戻されていました。改正後は、新しい110万円の枠の中なら持ち戻し不要、贈与税の申告もいらないという大きなメリットが生まれました。

暦年贈与との違い|110万円は戻されない

同じ110万円でも扱いが違います。暦年贈与の110万円は「亡くなる前7年分」が持ち戻されますが、精算課税の110万円は何年前の分でも持ち戻されません。長くコツコツ渡したい人にとっては、ここが効いてきます。

注意

相続時精算課税は、一度選ぶと暦年課税には二度と戻せません。「来年からやっぱり暦年贈与で」ということができないため、選ぶ前に向き不向きをよく確認しましょう。

結局どっちが得?相続税のタイプ別・選び方

ざっくり言うと、相続税がかからない見込みなら精算課税、かかる見込みで時間があるなら暦年贈与が基本の選び方です。

相続税がかからない人|精算課税が有利

財産が基礎控除以下の人は、相続時精算課税を使って生前にまとまった額を渡しても、最終的に相続税はかかりません。暦年贈与の年110万円より大きな額を、一度に非課税で早く移せるのが利点です。

相続税がかかる人|あえて贈与税を払う

相続税がかかる人は、110万円の非課税枠にこだわりすぎず、あえて500万円ほど贈与して贈与税を払った方が、トータルで負担が軽くなることがあります

500万円を贈与した場合の贈与税

48.5万円

特例税率(親→18歳以上の子など)。実質の負担は約9.7%=「約1割」

計算は「(500万円-110万円)×15%-10万円=48.5万円」です(出典:国税庁No.4408)。相続税は財産が多いほど税率が上がるため、高い相続税率がかかる前に、低い贈与税(約1割)で先に移してしまうという考え方です。

ただし、この方法が本当に得になるのは、次の2つがどちらも満たせるときだけです。当てはまらないと逆効果になり得ます。

  • 贈与から7年以上たち、暦年贈与の持ち戻しの対象から外れること(=早めの実行がカギ)
  • 相続税の「限界税率(いちばん高い部分の税率)」が、贈与税の負担率(この例で約1割)を上回ること

進め方の基本|確認→選択→早めに実行

迷ったら、次の順番で整理するとスムーズです。

  1. 財産が基礎控除を超えるか確認

    「3,000万円+600万円×相続人の数」を超えそうかを、まずチェックします。

  2. 暦年贈与か精算課税かを選ぶ

    課税対象か、年齢、渡したい額をもとに、どちらの制度が合うかを決めます。

  3. 早めに贈与を始めて記録を残す

    贈与契約書や振込記録を残しておくと、後々のトラブル防止になります。

よくある質問(相続税の生前贈与Q&A)

相続税対策の生前贈与で、特に多い疑問をまとめました。

Q.暦年贈与の110万円は、何人からもらっても非課税ですか?

A.非課税枠は「もらう人」ごとに年110万円までです。複数の人からもらった場合は合計で判定するため、2人から110万円ずつ受け取ると220万円となり、110万円を超えた分に贈与税がかかります。

Q.孫への贈与も、7年の持ち戻しの対象になりますか?

A.原則、相続や遺言で財産を受け取らない孫は持ち戻しの対象外です。ただし、生命保険金の受取人になっているなど、相続で財産を受け取る立場の場合は対象になることがあります。

Q.「あえて贈与税を払う」のは、本当に得なのですか?

A.ケースによります。贈与が7年の持ち戻しを過ぎて成立し、相続税の限界税率が贈与税の負担率を上回るなら得になりますが、そうでなければ逆効果です。財産額や年齢によって結果が変わるため、個別の試算が欠かせません。

Q.生前贈与は、いつから始めるべきですか?

A.早いほど有利です。暦年贈与は7年の持ち戻しがあるため、長く続けるほど非課税で移せる総額が増え、持ち戻しの影響も避けやすくなります。

まとめ|相続税は生前贈与で減らせる

まとめ

相続税は、生前贈与を計画的に使えば合法的に減らせます。2024年の改正で、暦年贈与は「7年持ち戻し」になり“早めの実行”がより大切に、相続時精算課税は「毎年110万円が非課税(持ち戻し不要)」で使いやすくなりました。

相続税がかからない見込みなら精算課税、かかる見込みなら暦年贈与や「あえて贈与税を払う」方法も選択肢です。どちらが有利かは財産額・年齢・家族構成で変わるため、自分の状況に当てはめて判断することが大切です。

※本記事の金額・制度は2026年6月時点の情報です。制度は改正されることがあるため、最新の内容は国税庁のNo.4161(生前贈与加算)No.4103(相続時精算課税)No.4408(贈与税の計算)の各ページでご確認ください。